遺言書 | 遺産相続のトラブル防止
遺言書(いごんしょ)は、遺産相続で無用なトラブルを生じさせないため生前に遺す書面です。
また、遺産相続にあたって遺族がまず行うのは遺言書を探すことです。
遺産相続10のポイントはこちら
遺言書の必要性
遺言書を書く人の割合は、全体で1割にも満たない数字です。
資産家や不動産を多く持つ人にしか関係のない話だと思われるかもしれません。
しかし、残された人たちが無用な争いをしないためには遺言書が有効です。
それぞれの家族に必要な形での遺言書が必要なのではないかと思います。
特に遺言書が必要なケースを挙げておきます。
遺言書の必要な例 ①子供がいない夫婦
配偶者は常に相続人となりますが、子供がいない場合は親又は兄弟姉妹も相続人となります。
長年連れ添った配偶者にすべての財産を残したいときに遺言書は有効です。
親には遺留分がありますが、親が死亡しており兄弟姉妹しかいない場合、兄弟姉妹には遺留分はありません。
つまり、すべての財産を配偶者が相続することができます。
遺言書の必要な例 ②再婚で前妻の子がいる
離婚をして前妻との間に子供がいると、その子供も当然相続人となります。
再婚をしているなら、今の配偶者と前妻の子供との間に争いが起きることも考えられます。
このため、遺言書により意思を伝えておくことが重要となります。
遺言書の必要な例 ③息子の嫁が献身的に介護をしてくれた
息子の嫁は相続人ではありませんので、遺言書がなければ財産を相続させることはできません。
晩年の自分の世話をしてくれた息子の嫁にお礼の意味を込めて財産を残したい場合もあります。
この場合、遺言書に自分が思うふさわしい金額を記しておくことで、相続させることができます。
遺言書の必要な例 ④内縁の妻
内縁の妻も相続人ではありません。
遺言書により内縁の妻に相続させる旨を記しておく必要があります。
遺言書の必要な例 ⑤事業継承
事業を経営している場合など、その経営基盤などが共有財産になってしまうと経営上トラブルが起こる可能性があります。
事前に遺言書で誰に承継させるか決めておかなければなりません。
遺言書の必要な例 ⑥相続人が一人もいない
相続人が誰もいない場合には、その財産は国へ帰属することになります。
それを避けるために、特別な人や施設、団体など、自分の財産が役に立つよう寄付したいときなども遺言書が必要です。
遺言書の種類
遺言書にはいくつかの種類があります。
自筆証書遺言書、公正証書遺言書、そして秘密証書遺言書の3種類です。
3つ目の秘密証書遺言書に関しては、手間も費用もかかります。
選択する人は少ないようですのでここでの説明は省きます。
遺言書① 自筆証書遺言書
遺言書を残す本人が自分の手書きで本文、署名、日付などを書き記し、押印します。
いつでも何度でも書き直すことができます。
思いついたときに作成でき、費用もかかりません。
このため、こちらを選ばれる方が多いようです。
決まった書式などはありません。
必要事項を漏れなく詳細に書いておく必要があります。
誰にどの財産をどれだけ残すのか、遺産分割の方法などを記載します。
不動産などの財産は番地まで正確に記しておかなければなりません。
自筆証書遺言書は遺言者の手書きでなければなりません。
財産目録についてはパソコンでの作成も可能です。
その添付書類のすべてに自筆での署名と捺印が必要です。
なお、日付は「令和〇年〇月 吉日」では無効になることもあります。
必ず「令和〇年〇月〇日」としておきます。
自筆証書遺言書を探す
遺産相続が発生したら、まずは故人が遺言書を残してあるかどうかを確認しましょう。
自筆証書遺言書を探す場合、最初は故人の自宅を探すことになるでしょう。
金庫、仏壇、引き出し、タンスなどが一般的です。
自宅に保管していなければ、銀行に預けている、弁護士等の専門家が保管している場合もあります。
それらしい預かり証などがないかを確認してみましょう。
自宅等で自筆証書遺言書が発見されたら、勝手に開封してはいけません。
家庭裁判所での検認手続きが必要になります。
遺言書保管制度
自筆証書遺言書を法務局で保管してくれる制度があります。
故人がこの制度を利用すると、保管所より「保管証」が交付されます。
その保管証が見つかれば、「遺言書情報証明書」の請求をすることで、遺言書の内容を知ることができます。
また、故人がこの制度を利用しているかどうか不明な場合は、「遺言書保管事実証明書」の交付請求を行います。
それにより、遺言書が法務局に保管されているかどうかの事実だけを知ることができます。
遺言書の中身を知ることはできません。
必要事項を記入した請求書と共に添付書類が必要です。
遺言者の死亡の事実がわかる戸籍謄本、請求者の住民票の写し、相続人であることがわかる戸籍謄本を用意します。
遺言書② 公正証書遺言書
公正証書遺言書は、公証役場で作成します。
遺言者が遺言に記したい内容を公証人に相談しながら決め、それを公証人が作成します。
その後、遺言者と証人二人以上の立ち合いにより、間違いがないかを確認します。
遺言書の原本は公証役場に保管されますので、紛失や改ざんの心配もありません。
公正証書遺言書を作成するためにかかる費用は、財産の額や状況などによって算定方法が定められております。
お近くの公証役場へお問い合わせください。
公正証書遺言書は公証役場とのやり取りや、費用もかかってくるというデメリットはあります。
しかし、公証人は長年法律の仕事に携わってきた知識も経験も豊富な方がされていますので、安心して遺言書を作成することができるでしょう。
自分で作るには内容が複雑すぎる、確実な遺言書を作りたい、などの場合には公正証書遺言を選ぶと良いでしょう。
また、公証人が自宅や施設に出向いて作成してくれるようですので、公証役場へ行くことができない高齢や病気の方でも依頼することができます。
公正証書遺言書の立ち合い証人
証人二人は、遺言者が自ら用意することができます。
ただし、証人になるには条件があります。
次に挙げる人は証人にはなれませんので注意が必要です。
①未成年
②推定相続人
③財産を贈られる人
④ ②と③の配偶者及び直系血族(祖父母、両親、子供、孫など)
遺産相続において利害関係のある人は証人にはなれません。
専門の知識のあるお近くの行政書士や司法書士に依頼する方法もあります。
適当な人物が見つからない場合は、公証役場で紹介してもらうこともできます。
いずれにも報酬が必要になります。
公正証書遺言書を探す
公正証書遺言書を探すには、検索システムを利用することができます。全国どこの公証役場からでも遺言書があるかどうかを調べることができます。
こちらでも、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や、請求人が相続人であることがわかる戸籍謄本、請求者の印鑑証明書などいくつかの書類が必要です。